[ クローズアップ ]
特別座談会
人気ガイドに聞いた!
エジプトの魅力
貸切りだからこそ伝えられる物語がある
企画=篠原陽子
文=佐藤淳子
三越伊勢丹ニッコウトラベルでは、昨年、今年と好評いただいたエジプトツアーを来年も催行します。そこで今号では、人気ガイドの3人に、エジプトの魅力や、3つの人気観光地の貸切見学とナイル河チャータークルーズを盛り込んだ弊社ツアーについて、企画担当の篠原陽子が聞きました。
ツアーガイドならではの話が満載です!
人気の観光地だからこそ貸切りの価値がある
篠原 いつも楽しいガイドをしてくださり、感謝しています。
ナーセル 御社のツアーは貸切企画があるのがいいですね。
篠原 ありがとうございます。前回はクフ王のピラミッドとツタンカーメンの墓の観光、アブシンベル神殿の「音と光のショー」を貸切りにしました。
ナーセル クフ王のピラミッドもツタンカーメンの墓も、世界からの観光客で常に混雑していて、通常は入場するまでに時間がかかるし、入っても人が多くてゆっくりできません。だから、待たずに入場でき、グループのお客さまだけでじっくり見られる貸切観光は非常に価値のあるものだと思います。
ミーナ 一般公開されていない場所を見ることもできますよね。クフ王のピラミッドでは、一般公開していない「王妃の間」にもご案内できます。
ナーセル 閉まっている扉が目の前で開けられるので特別感満載です。調査の光景が見られることもあり、ガイドにとっても特別な機会となります。
エマード それにピラミッドやツタンカーメンの墓は、一般観光ではガイドがお客さまと一緒になかに入ってご説明することができません。
ミーナ ツタンカーメンの墓では、貸切りならミイラの近くで詳しく話ができてお客さまに喜ばれますよね。
ナーセル アブシンベル神殿の「音と光のショー」も貸切りがいいです。そうしないと必ず日本語のショーになるとは限りません。その日の入場者の顔ぶれでショーの言語が決められるので。
エマード 写真も撮りやすいし。
ナーセル プロ仕様のカメラで熱心に撮られるお客さまも多いですからね。ショーの様子を前後左右から角度や場所を変えて撮りたくても、一般の人たちと一緒だと容易に動けません。
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エジプト古王国の権威の象徴であるクフ王のピラミッド。貸切観光では、いまだ謎の多いこの巨大な建造物の内部を、ガイドの説明とともに見学。通常非公開の「王妃の間」も特別に入場が許可される
チャーターだからこそ味わえるナイル河クルーズの醍醐味
篠原 ナイル河クルーズ客船「ソネスタ・サン・ゴッデス号」のチャーターもお客さまに喜んでいただいています。
ナーセル 普通のクルーズでは、乗下船も食事もすべて時間が決められています。だから出港時間に間に合うように観光地を早めに出発することもしばしば。その点、チャーターなら船に戻る時間も食事の時間もすべてツアーの都合に合わせてもらえるので、最良の旅程で観光ができます。
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ナイル河を進むソネスタ・サン・ゴッデス号。30室すべてスイートのこの優雅な客船をチャーター
篠原 食事はいかがでしたか?
ナーセル チャーターだと和食も提供できるのが良かったですね。日本企業や日本大使館での勤務経験のあるシェフが乗船するので、前回のツアーではご飯やみそ汁だけでなく、肉じゃがなどの日替りの総菜や冷やし中華をお出ししました。いろいろな国の人が乗り合わせていると、こうはいきません。
エマード ツタンカーメンやクレオパトラが好んだとされる食材を使った特別な食事もご用意できます。なかなかできない食体験だと思いますよ。
篠原 ナイル河クルーズの場合、ビュッフェ形式の食事が一般的ですが、選択制のコース料理で夕食をご提供できるのも当船の特徴ですよね。落ち着いてお召しあがりいただけると思います。
ナーセル 船内イベントも多彩です。前回のツアーでは、アスワン停留時にヌビア文化を楽しむパーティーを開催しましたが、皆さん、ダンスや歌などで最後まで楽しまれていました。踊り疲れて部屋に帰るという方もいたくらい。
エマード ガラベイヤパーティーでは、全員でガラベイヤ(エジプトの民族衣装)を着てゲームで盛り上がりました。
ミーナ ガラベイヤは、私たちからのプレゼントです。正直なところ、お土産用に売られているガラベイヤはあまりデザインが良くない(笑)。私たちがご用意するのは一般のエジプト人が着るエジプト綿でできた素敵なガラベイヤ。来年も楽しみにしていてください。
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エジプト文明を育んできたナイル河の両岸をラウンジからもゆったり眺望
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下船前夜のディナーでは、ピラミッドを模したデザート「ベイクドピラミッド」も登場
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バルコニー付きの客室は約40㎡。ナイル河クルーズ客船の平均的な客室面積のほぼ2倍
人気ガイドに聞いた!エジプトの魅力
エジプトの古代遺跡謎だからこそ魅力的
篠原 エジプトは見どころ満載ですが、個人的に好きな場所はどこですか?
ナーセル アブシンベル神殿ですね。神殿をつくったラムセス2世は最も長生きしたファラオ(王)で、自分の力を誇示するため、あちらこちらに神殿をつくりました。当時のエジプトは多神教だったので、神殿によって祀られる神さまが違います。アブシンベル神殿の神さまは太陽神。訪れるたびに言葉で表せないほどの力が沸いてきます。
ミーナ 100人くらい奥さんがいたといわれるラムセス2世ですが、最愛の人はネフェルタリ。彼女のためにつくられた小神殿も素敵です。
ナーセル ラムセス2世とネフェルタリが一緒に描かれている唯一のレリーフもここで見られますね。
ミーナ アブシンベル神殿は、岩に掘られた神殿としても有名ですよね。
エマード 座像は奈良の大仏よりも大きく迫力満点。しかもあれだけ大きいのに左右対称で美しい。太い唇の彫刻など、どこをとってもすばらしいです。何より入口から約60メートル奥にある四つの座像に、年2回、太陽の日射しがきれいに当たるよう緻密に設計されていることに感動します。
ミーナ もともと別の場所にあったものを移転する大プロジェクトが組まれたことでも知られています。世界遺産はこれがきっかけで誕生しました。
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古代エジプト最盛期の王ラムセス2世が造営したアブシンベル神殿。岩に彫られた4体の座像はすべて王自身の姿。多彩なレリーフが当時を物語る
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ラムセス2世が最愛の王妃ネフェルタリのために
建てたとされるアブシンベル小神殿
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ナセル湖でのミニクルーズで湖上からも壮大な神殿を望む
エマード 私はピラミッドも好きですね。家が目と鼻の先だったので、小さい頃から「何のために、どうつくられたのか」と強い興味をもっていました。よく遊んでいたピラミッドのそばの砂山の下から労働者の墓が発見されたことも、思い入れがある理由です。これで宇宙人がピラミッドをつくったという説は消えましたが、いまだ謎だらけ。解明されないからこそ魅力を感じます。
ミーナ 私は小学校の遠足で行ったのがピラミッドエリアでした。ここで、はじめてラクダに乗って、「ラクダは楽だ」って思いました(笑)。
ナーセル 私が生まれたのもピラミッドから歩いて5分ほどのところ。あの大きな建造物を見ると人間の力には限界がないことがよくわかります。約4400年前に約200万個の石を素手で運んだ人がいたのですから。私は、悩んだ時は彼らを思い出し、絶望してはいけない、もっと頑張らなければならないと思います。私の名前の通り「為せば成る」(=ナーセル)と。
篠原 皆さん、駄洒落が上手で(笑)。
エマード 笑いはガイドに必要な要素なんですよ。お客さまを元気にするし、目覚めの効果もある(笑)。あと、サッカラのピラミッドも感動的ですよ。周囲の貴族や聖牛の墓、日常生活を描いたレリーフもすばらしい。いまだ多くの謎があるのも魅力的です。
ナーセル ルクソールの王家の谷も私にとって謎の世界ですね。墓のなかの壁に残された文字など、読めば読むほど謎が深まります。レリーフはファラオからのメッセージかもしれません。「君たちはこのメッセージが読めるか。理解できるか」と。
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ルクソールのナイル河西岸に広がる王家の谷。かつてネクロポリス(死者の町)と呼ばれたこの地にはファラオの墓が点在
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サッカラの階段ピラミッド。エジプトにあるすべてのピラミッドの原型ともいわれる重要な建造物
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巨大なオベリスクで知られるルクソール神殿。ライトアップされた夜の神殿も幻想的
ミーナ 王家の墓のなかで私が最も美しいと思うのが、ツタンカーメンの墓です。まるで昨日描かれたかのような鮮やかな色が残っていて感動的です。残された文字からは、古代エジプト人の考えもよくわかる。
エマード 古代エジプトでは天文学や数学、医学、そして義足やインプラントなどの医療技術も高度に発達していました。古代エジプトの壮大さと繊細さを同時に感じられるのがエジプトだと思いますね。
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王家の谷でも最も美しいとされるのがツタンカーメンの墓。ほぼ完全な状態で発見された墓内部の壁には鮮やかな色が残る
エジプト人の明るさや多彩な料理も旅の魅力
篠原 遺跡以外で、日本のお客さまに楽しんでいただきたいものは?
エマード フレンドリーで明るいエジプト人の人柄にふれられるのも、エジプト旅行の魅力の1つだと思います。
ミーナ 私は田舎の風景をぜひ見てほしいですね。たとえばサッカラとダハシュールの間には、畑やヤシの木、ロバ、牛、羊など、街とは異なる風景が広がっていて、そこで暮らす人々の様子が見られます。
エマード エジプトでは、アラブ人のほかにも多彩な民族が暮らしています。
ミーナ アスワンやルクソールなど南部では、ヌビア人特有の文化に出あえるはず。少しめぐるだけでも、カイロなどとはまったく違う空気が感じられるのではないでしょうか。
ナーセル ヌビア料理や名物のハイビスカスティーは、クルーズ中も楽しんでいただけますね。
篠原 エジプト料理でおすすめはありますか?
エマード ターメイヤ(そら豆のコロッケ)、キャベツのマハシー(詰め物)、タヒーナ(白ごまのペースト)、 モロヘイヤスープ、コフタ(エジプト風ハンバーグ)、コシャリ(エジプト風そば飯)などいろいろありますよ。
ミーナ ターメイヤは私の大好物です。ハト料理も。
ナーセル コシャリはぜひ食べていただきたいです。米やパスタ、豆を混ぜて、揚げた玉ねぎとトマトソースをかけたもので、単純だけど同じ味はないといわれるほど多様で奥深い料理です。
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多彩なエジプト料理。ターメイヤはそら豆をつぶして揚げたコロッケで、サクサクとした軽い口当たり
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名物のハイビスカスティーは、さわやかな酸味が特徴。クルーズ中にもぜひご賞味を
エジプトを大好きになって また来たいと思ってほしい
篠原 帰国と同時に「またエジプトに行きたい」とおっしゃるお客さまもいらっしゃいます。観光の魅力はもちろんですが、ガイドの皆さんの案内に魅了される方も多いのではないかと。普段、皆さんはどういったことを意識してガイドされているのでしょう。
エマード 私は、すべてのお客さまが楽しめるよう陽気で明るい雰囲気をつくるようにしています。いい思い出として心に刻み、エジプトを大好きになって、また来たいと思ってほしいので。
ナーセル 常に気をつけているのは、お客さまが疲れていないか、ですね。
エマード 歩きにくい場所や日射しが強い場所はできるだけ避けています。お疲れの様子なら、クイズで笑いが起こるようにしたり。
ミーナ 話をする場所やタイミングも考えますよね。
エマード 私は必ず止まってから説明をはじめるなど、聞いてもらいやすいよう工夫しています。関心をもってもらえるように日本の歴史や文化の話を交えたりもしますね。
ナーセル 写真撮影のスポットにもなるべくご案内するようにしています。
エマード 天候や時間帯、日の射し具合でいい写真が撮れる場所は違ってきますからね。
篠原 細かな配慮をしてくださってるんですね。来年もよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
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「エジプトを好きになってほしい」と語る3人。左からナーセルさん、エマードさん、ミーナさん