世界の訪問したい国ランキングで常に上位に位置するタイ。旅人はなぜタイに魅了されるのでしょうか。
メコン河やチャオプラヤ河などの大河が流れる肥沃な大地には、少数民族を含め多様な民族・文化が共存しています。高層ビルが林立する国際都市バンコクは近代化が進む一方で、街中には数多くの寺院や宮殿が存在し、郊外には手付かずの自然が残されています。そして、伝統と近代化が融合したホテルでは、一流のおもてなしを体験できる。そんな魅力にあふれ、華麗なる進化を遂げるタイに、今、世界のラグジュアリー市場が注目しています。
東京では長雨が続く6月に、ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド(以下、LHW)の主催で、東南アジアのタイを訪れました。LHWは世界80か国に400軒超の加盟ホテルを有する世界最大級のラグジュアリーホテルコレクションの1つ。今回は、厳しい審査基準をクリアしたタイのホテルが、新たにLHWに加盟したということで視察に行ってきました。
日本からタイの首都バンコクへは、直行便を利用して約6時間半。スワンナプーム国際空港には、アジアはもとより、欧米や中東からと思われる旅行者が大勢やってきており、バンコクが東南アジアを代表する国際都市であることを実感しました。空港をあとにして、まずはバンコク初の日系ホテル「ザ・オークラ・プレステージ・バンコク」へ向かいます。
ホテルに到着すると営業部長の米山さんが出迎えてくださいました。日本人の宿泊客は我々のほかに数人のビジネスマンのみで、最近はヨーロッパのほか、シンガポールや香港からのゲストが多いとのこと。日本を代表するホテルが、ここバンコクでも世界中からの旅行者を迎え入れていることに、日本人として少し誇らしくなりました。ウェルカムドリンクでひと息ついたあと、さっそく館内見学へ。
ホテルは2012年に開業。240ある客室はゆったりと広めにできており、通常カテゴリーが「デラックスルーム(43〜47平方メートル)」。木目調、ベージュ色、木の調度品で整えられ、とても落ち着いた、リラックスできる雰囲気です。客室は26階以上にあるため、眺望も抜群。バスルームは広めのつくりとなっており、もちろんバスタブ付き。温水洗浄機能付きのトイレや、クローゼットには浴衣が用意されているのも、日本人にはうれしいサービスです。
続いて、25階に位置するホテル自慢の屋外プールへ。扉を開けると視察メンバー一同から「おお!」と感嘆の声が上がります。プールの端が空に溶け込むようなインフィニティ仕様となっていて、まるで空中に浮かんでいるようでした。“天空のプール”と称されるこの空間はまさに非日常。泳がなくてもこの景色は必見です。
あっという間に日が沈み、夕食のレストランへ。今晩は有名グルメガイドで1つ星を獲得しているフランス料理レストラン「エレメンツ」でいただきます。日本から取り寄せた四季折々の素材や、現地の食材を使った本格フランス料理は、自分が今どこにいるのかも分からなくなってしまうほどのすばらしい体験となりました。ちなみに朝食は、その日の体調や好みに合わせてビュッフェスタイルの「Up & Above」か、日本料理レストランの「山里」から好きな方を選べます。
視察最初のホテルではありましたが、とても印象深い滞在となったため、ツアーでは「ザ・オークラ・プレステージ・バンコク」で旅の最後を締めくくることに決めました。
敬虔な仏教徒が多く、「微笑みの国」と呼ばれるほど穏やかな国として知られているタイには、煌びやかで美しい仏教建築が数多く存在しています。バンコクの観光では、エメラルド仏が祀られるワット・プラ・ケオ(エメラルド寺院)、大寝釈迦仏を擁するタイ最古の寺院ワット・ポー、三島由紀夫の小説『暁の寺』で知られるワット・アルンなどを訪れます。3大寺院の間にはチャオプラヤ河が流れているので、渡し舟に乗って訪れるのがおすすめです。
タイ北部の中心都市チェンマイへはバンコクから国内線で約1時間。タイ第2の都市ではありますが、空港の外には高い建物がなく、どことなく時間がゆっくり流れている印象を受けます。また、チェンマイは「タイの小京都」とも呼ばれていて、格式の高い寺院が旧市街や郊外に数多く点在しています。しかし、一歩街を出ると緑豊かな自然が広がり、広大な敷地に多くのゾウが保護、飼育されています。タイの人々にとって、ゾウは歴史上や日常生活で密接な関わりがあり、昔から特別な存在として敬われています。ツアーではゾウと人々のつながりを学び、ふれあい体験もお楽しみいただく予定です。
また、タイ北部には、多くの少数民族の人々が住んでいます。少数民族のなかで日本でも有名なのは、カレン族のなかの一部族、カレン・パドゥン族かもしれません。カレン・パドゥン族はタイからミャンマーに広く住む民族で、女性は真鍮のリングを首に巻いて、首を長く伸ばす慣習があることから、通称“首長族”とも呼ばれています。幼いころからリングを巻いて少しずつ首を長くしていくのだそうで、首を長くすることは美しさの象徴とか、リングを巻いて首を守るためだとか、首を長くする理由には諸説あるようです。
視察では、昨年新たにLHWに加盟したホテルに宿泊させていただき、評判どおりで良かったのですが、近くにかつての英国領事館の建物を利用したホテルがあると聞いて行ってみました。
「アナンタラ・チェンマイ・リゾート」は、市内中心部にありながら静謐で落ち着いた空気が流れ、まるで隠れ家リゾートのような雰囲気で大変気に入りました。館内はタイ北部の木材をふんだんに使ったスタイリッシュなインテリアとなっていて、客室は約50平方メートルと広々としているので、ゆったりとお寛ぎいただけます。さらに、プライベートバルコニーにはデイベッドが備えられていますので、手入れの行き届いた庭園をのんびりと眺めていただけます。
このホテルは独自のウェルネスプログラムも充実していて、アナンタラ・スパではタイ式マッサージや温石マッサージなど癒し効果抜群のトリートメントを楽しめます。屋外プールはホテルとは思えない34メートルの長さがあり、しっかりと泳げますし、ヨガの体験プログラムに参加して、心身をリフレッシュさせることもおすすめです。
興味深かったのが、2階のレストラン「ザ・サービス1921レストラン&バー」。英国統治時代に「英国政府が当地に創設した諜報機関を思わせる架空のレストラン」がコンセプト。メニューが「TOP SECRET(極秘)」と書かれた封筒に入っているなど、随所に仕掛けが隠されているのです。ホテルマネージャーと打ち合わせをし、当日はサプライズもご用意する予定です。お楽しみいただけるとよいのですが……。
先進的なデザインの高層ビル、歴史ある寺院の数々、手付かずの自然、奥深い味わいのタイ料理、そして、昔から変わらない人々の微笑みがタイにはありました。
今回の視察は雨が多い雨季の訪問となりましたが、ツアーでは1年で最も過ごしやすい乾季にご案内します。また、今回の視察では訪れなかった世界遺産のアユタヤ遺跡など、タイの歴史や文化、大自然を余すことなく楽しめる行程としています。どうぞご期待ください。