[ 海外特集③ ]

春ならではの楽しみを各地で満喫

花々と祭りを楽しむ
春のヨーロッパ

企画=南家知文/木島将也 文=大友園子
  • イメージ イメージ マデイラ島・フンシャルのフラワーフェスティバル。
    花で飾られた何台もの山車が通り過ぎ良い香りが漂う ©Mike McBey

陽光が輝きを増し、花々が一斉に咲きはじめるヨーロッパの春。春本番を迎える頃、各地で春祭りや音楽祭が開催されます。花々が街並みを彩るなか、それぞれの国や地方を象徴するような春のイベントを楽しみにでかけてみませんか。

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花の島マデイラのフラワーパレード バラの谷カザンラクのバラ祭り

心浮き立つ春。ヨーロッパ各地で春祭りが開催されます。まずご紹介するのは、ポルトガルの首都リスボンから航空機で約2時間、大西洋に浮かぶマデイラ島のフラワーフェスティバルです。マデイラ島は年間平均気温が20度前後という温暖な気候に恵まれ、南国のカラフルな花々が咲く「花の島」。深い森が広がる一方で、街中でも本土では見られないような色とりどりの花が咲く花壇や木々が、訪れた人々の目を楽しませてくれます。

フラワーフェスティバルは、毎年5月に島の中心都市フンシャルで開催されます。メインイベントは、花々で飾られた山車が街の目抜き通りを練り歩く「フラワーパレード」。街全体が湧く華やかなイベントで、まるで島中の花を集めたかのような山車や華やかなダンサーたちの行列が、次から次へ繰り出します。人々の歓声と陽気な音楽が響くなか、山車が通り過ぎるたびに花の香りが漂い、うっとりする時間が過ぎて行きます。今回は、特設観覧席から花の島マデイラが最も華やぐひと時を、混雑を気にすることなく存分にお楽しみください。

またマデイラ島を訪れたら1度は経験したいのが、かつては坂道の多い街の交通手段だったという素朴で楽しいアトラクション「トボガン」。郊外の小さな村の坂道を、村の名物となっている木製のそり付きの大きなカゴ「トボガン」に乗って下ります。このそりを押してもらいながら坂道を下れば、誰もが笑顔になること請け合いです。

  • イメージ イメージ ©Francisco Correia-AP Madeira

さて、ヨーロッパの東に位置するブルガリアに初夏を告げるバラ祭りも、1度は体験したい華やかな風物詩です。バラ祭りが開催されるのは、バルカン山脈の南側に広がる、その名も「バラの谷」と呼ばれる一帯。点在する村々で良質なローズオイルやローズウォーターの原料となるバラを栽培しています。一面に栽培されているバラは主に中東原産の濃いピンク色の小ぶりなバラ「ダマスクローズ」。毎年5月から6月の収穫時期に合わせて、村ごとにバラ祭りが開催されています。

その中心となる村がカザンラクです。お祭りの日は少し早起きをして、朝の清々しい空気のなか、バラ畑でのバラの花摘み体験に出かけてみましょう。バラの香りが漂うなかで、1つひとつ花を摘むのは童心に帰ったような気分になります。バラ祭りの会場では、鮮やかな民族衣装の子どもたちやバラの女王も登場し、だれもが笑顔になります。摘んだバラは袋に入れて持ち帰ることができます。ホテルの部屋に飾れば良い香りが広がり癒されます。そして1日の終わりには、バスタブにたくさんのバラの花を浮かべて、香りに包まれた少し長めのバスタイムを楽しみましょう。

  • イメージ イメージ バラの谷で開催されるバラ祭り
  • イメージ 朝には高級香水の原料となるバラ摘み体験も楽しみたい
  • イメージ バラの谷特製のローズオイルやローズウォーター、ローズジャムや素朴さの残る刺繍を施した小物もお土産に人気
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エストニアで5年に1度の歌の祭典 夏のバルト三国周遊

たっぷり日射しを受け、緑も人々の表情も輝く夏。バルト海に面したバルト三国をめぐるのはいかがでしょう。南のリトアニアからラトビア、エストニアへと向かいます。リトアニアでは湖面に浮かぶように城が建つトラカイ湖や、杉原千畝ゆかりの地カウナス。ラトビアではバルト海の交易で栄えた歴史を伝える首都リーガなどを訪れます。

最後に訪れるエストニアでは、首都タリンで開催される「歌と踊りの祭典」を鑑賞します。この音楽祭は、5年に1度、4日間に渡って国内外から民族衣装に身を包んだ人々が、広大な「歌の原」に集まり、歌や踊りを披露する国を挙げての大イベントです。数万人の歌い手たちによる歌声は迫力満点。他国に支配された時代にも歌い継がれてきた魂の歌声が会場に響き渡る瞬間は、会場全体が一体感に包まれ揺れるよう。「歌と踊りの祭典」として、ユネスコの世界無形遺産にも登録されています。地をも揺るがす歌声に、この国の人々のアイデンティティーを感じずにはいられません。

そして、合唱に負けず劣らずすばらしいのが踊りです。リズミカルな音楽に合わせて、カラフルな衣装をまとった人たちが、息を合わせて踊るフォークダンスも、一体感があり見ごたえがあります。歌と踊りの会場や日程が別々となっていますので、両方のイベントを楽しめます。

  • イメージ イメージ 鮮やかな民族衣装をまとった人々が集い歌い踊る姿は見学者の胸を打つ ©Aivar Pihelgas, Visit Estonia
  • イメージ ©ToBreatheAsOne
  • イメージ 中世ハンザ都市の面影残る、バルト海に面したエストニアの首都タリン
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花々に彩られた ドイツの2つの音楽祭

春はヨーロッパ各地で音楽祭が開催される季節でもあります。たとえばドイツの歴史ある高級保養地として知られるバーデン・バーデン。ローマ時代から知られる温泉だけでなく、音楽劇場「バーデン・バーデン祝祭劇場」も街の自慢です。ツアーでは恒例のイースター音楽祭で「ベルリン・フィル」のコンサートを鑑賞します。またスイス国境に位置するボーデン湖にも足を延ばし、ドイツにありながら熱帯植物も見られる「花の島」マイナウ島も訪れます。4月のマイナウ島には、さまざまな球根花が花を咲かせます。見頃を迎えたチューリップの花畑の景観は圧巻。そのほかアネモネ、日本から贈られた桜など春の花々が迎えてくれます。さらに今回は飛行船ツェッペリン号に乗って、上空からボーデン湖周辺を遊覧します。大空に向かってゆっくりと上昇していく感覚は飛行船ならではの体験。眼下に広がる湖とミニチュアのような家並み織り成す大パノラマは見飽きることがありません。

  • イメージ イメージ イースター音楽祭ではベルリン・フィルによる世界最高峰の演奏が楽しみ
  • イメージ 優れた音響効果と豪華な内装が施されたバーデン・バーデンの祝祭劇場
  • イメージ ボーデン湖に浮かぶマイナウ島。年間を通して花々が咲く「花の島」

一方で5月のドイツの旅では、春の風物詩でもある、ドレスデン音楽祭の前夜祭コンサートを1等席で鑑賞します。会場は第二次大戦に廃墟となり、市民らの手によって見事によみがえったフラウエン教会。演目は諏訪内晶子のバイオリン、NHK交響楽団の演奏でベルク作曲のバイオリン協奏曲『或る天使の思い出に』、武満徹作曲『3つの映画音楽』、人気の高いブラームスの『交響曲第4番』が予定されています。旅の途中、各地で水の重量を動力とした珍しいネロベルク登山鉄道や蒸気機関車に乗車、シュプレーバルトでの運河クルーズなど、さまざま乗り物の体験もこの旅だからこその魅力です。ほかにも知る人ぞ知る「バラの街」エルトフィレや、藤の回廊が見事なヴァインハイムといった花の名所も訪れます。知られざる珠玉の街々の春の風景もたっぷりとお楽しみください。

  • イメージ イメージ ドレスデン音楽祭の会場となるのは市民の手によって見事に復興したフラウエン教会
  • イメージ 2025年のドレスデン音楽祭の前夜祭コンサートはNHK交響楽団が武満徹の作品も演奏
  • イメージ フランクフルト郊外、ライン河沿いにある街エルトフィレ。白い塔が美しい城のバラ園が見どころ