[ クルーズ特集 ]
シックな客船でめぐる
魅惑の島々①
企画=阿部遥奈/加藤のどか
文=佐藤淳子
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ホーランドアメリカラインの「ザイデルダム」。クラシカルかつ優雅なこの客船で訪れるのは北米。ボストンで乗船、セントローレンス河畔の紅葉を堪能し、ケベックへ。バスタブ付きの客室でゆったり寛ぎ、船内生活を楽しむ旅を
世界には魅力的な島がたくさんあります。そんな島々を1度の旅でいくつもめぐるならやはり船。今秋出発のクルーズの旅のなかから、「ザイデルダム」で行くアメリカ・カナダと、「ノーティカ」でいくカナリア諸島・マデイラ島の2コースを取り上げ、それぞれ企画担当者がご紹介します。いずれも利用するのはシックで落ち着いた客船。寄港地も魅力的なら、下船後の観光も充実しています。
バスタブ付きの客室で快適な船内生活を
カナダの秋の風景といえば、なんといっても紅葉でしょう。私がご紹介するのは、錦繍のカナダを満喫する旅です。ローレンシャン高原などの人気スポットを陸路で訪れるだけでなく、船上から河岸の紅葉を愛でるという、さらなるお楽しみを盛り込みました。
乗船するのは、150年以上の歴史を誇るクルーズ会社、ホーランドアメリカラインの客船、「ザイデルダム」。クラシカルかつ高級感あふれる船で、船内に飾られた美術品の総額は、400万ドル(約6億3,000万円)に上るとか。生花が船内の随所に飾られているのも、船内の雰囲気を上品なものにしています。私の印象は「大人の船」。皆さまにも、きっと心地良さを感じていただけると思います。
客室の約8割が浴槽付きであることも、おすすめしたいポイントの1つです。ツアーでは、もちろんすべてのお客さまに浴室付きの客室をご用意します。旅に出る秋は過ごしやすい季節ですが、肌寒い日もあるかもしれません。ぜひ温かい湯船に浸かって、その日の疲れをゆっくり癒してください。
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メインステージでは日毎、多彩なエンターテインメントが繰り広げられる
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広いベランダ付きのシグネチャースイート
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お泊まりいただくお部屋はすべてバスタブ付き
河岸に迫る紅葉の山々 展望台からの眺めも感動的
では、船旅の行程をご紹介しましょう。アメリカのボストンでご乗船いただいたあとは、古くから帆船事業で知られる海辺の街カムデン、カナダのハリファックスへの寄港を経て、セントローレンス湾に浮かぶ島、ケープ・ブレトン島に入港します。19世紀にスコットランドからの移民が多く訪れたことから、ケルト文化の影響が残る島で、島最大の街シドニーの散策では牧歌的な港町の空気を味わっていただけることでしょう。通常のツアーではなかなか訪れない島ですので、この貴重な機会をぜひお楽しみください。
次に寄港するのはプリンスエドワード島です。ご存じのとおり、名作『赤毛のアン』の舞台となったこの島は、作者であるルーシー・モード・モンゴメリの生まれ故郷でもあります。モンゴメリの生家や、「グリーン・ゲイブルズ・ハウス」、「恋人の小径」、「お化けの森」といった物語ゆかりの場所を訪ね、アンの世界を存分に味わいましょう。昼食は、島名物のロブスターとムール貝をお楽しみいただく予定です。
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『赤毛のアン』の世界が広がるプリンスエドワード島
プリンスエドワード島を出港したあとに待っているのは、船旅ならではの秋景色です。船はセントローレンス湾からセントローレンス河に入り、2日かけてゆっくりと河を上ります。河幅が狭くなっていくにつれ、間近に迫ってくるのは、河岸からそびえ立つ山々。紅葉の時期には、その山肌を覆う木々の葉が黄や橙、朱色に染まり絵画のようです。船の両側に広がる壮大な秋景色をデッキからご堪能いただけると思います。
下船地となるケベックの街は、馬車で観光します。この日の宿泊には、街のシンボルともいわれる「フェアモント・シャトー・フロントナック」を選びました。名門ホテルで寛いでいただいたあとは、再びすばらしい紅葉の風景が待っています。紅葉したカエデの森を眺めながらメープル街道をドライブ、モントリオールを経て、紅葉の名所、ローレンシャン高原へ。
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色づいた木々が湖面に映る。ローレンシャン高原ならではの秋景色
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ローレンシャン高原に2連泊して美しい秋景色を堪能
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ケベックでの宿泊は名門「フェアモント・シャトー・フロントナック」
トランブラン山では、2022年にオープンしたばかりの新スポット、約40メートルの高さから紅葉の森を眺望できるツリー・トップ・ウォークにご案内します。高さを聞いて驚かれるかもしれませんが、頂上までは緩やかな螺旋状の通路。景色を愛でながらゆっくり散策できますのでご安心ください。ローレンシャン高原では、このほかモンロー湖の観光やゴンドラでのトランブラン山の空中散歩もお楽しみいただきます。ご存じのように、葉の色づき方は高度で異なります。その日その日で一番美しく色づいている場所にご案内しますので、楽しみにしていてください。
船上に車窓、ゴンドラ、展望台と、紅葉をさまざまな角度から堪能していただく贅沢な旅です。
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約40メートルのツリー・トップ・ウォーク。この高さから色づいたカエデの森を眺望
シックな客船でめぐる 魅惑の島々
シックな客船でめぐる
魅惑の島々②
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オーシャニアクルーズの「ノーティカ」。定員670名、3万トンクラスのサイズゆえ、乗下船の待ち時間もなく、サービスもきめ細か。メインダイニングでの食事も、席や時間が決められていないので、お客さまそれぞれのペースで
乗下船の待ち時間もなくサービスもきめ細か
船だからこそ快適にお楽しみいただけるコースとして、大西洋に浮かぶ常春の島々をめぐる旅をご案内します。
お乗りいただくのは、オーシャニアクルーズ社所有の「ノーティカ」です。同社が「Rクラス」と呼ぶ3万トンクラスの客船で、乗客定員が670名に抑えられているため、寄港地観光などで乗下船する際の待ち時間が少なく、快適に船旅を楽しんでいただけます。乗客1.7名に対して1名のクルーがサービスにあたる、きめ細かなおもてなしも特徴です。フォーマルナイトの設定がないため、ドレスコードは全日エレガント・カジュアル。ラグジュアリーな客船ながら、肩肘はらずリラックスしてお過ごしいただくのに最適な船だと思います。
船内は2022年に改装され、海と空をイメージしたやさしく落ち着いた色調に統一されました。客室は各種ありますが、心地良い海風を感じていただけるバルコニー付きのお部屋が私のおすすめです。食事にも定評があります。2つあるスペシャリティレストランも1回ずつ追加料金なしでご利用いただけるので、ぜひお試しください。
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ベランダ付きのペントハウス・スイートは約29平方メートルとゆったり広々
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ドレスコードは全日エレガント・カジュアル。リラックスできる雰囲気が魅力
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終日航海日の過ごし方も思いのまま。時にはライブラリーでゆったり読書も
個性豊かな5島をめぐり下船後はアレンテージョ地方へ
この旅では、ピカソ生誕の地であるスペインのマラガから乗船して、アルガンオイルで有名なモロッコのアガディールに寄港、その後、ハイライトであるスペインのカナリア諸島とポルトガルのマデイラ島をめぐります。
島ごとに異なる自然景観をもつカナリア諸島のうち、今回訪れるのは4島です。まずは火山の島、ランサローテ島へ。クレーターのあるティマンファヤ国立公園には荒涼とした風景が広がり、まるで地球以外の星のよう。ワイナリーでは、火山灰の土地で育つぶどうからつくったワインの試飲をお楽しみください。次はグラン・カナリア島です。カナリア諸島はコロンブスが大陸発見の旅で中継地点として利用した場所でもあります。島随一の街ラス・パルマスには、コロンブスが滞在した家などが残されているので、当時に思いを馳せながらの散策も一興でしょう。
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グラン・カナリア島のラス・パルマス。コロンブスゆかりの地が点在
3つ目の島、テネリフェ島には、スペイン最高峰、標高約3,717メートルのテイデ山があります。ロープウェーで登る展望台からは、砂の平原や奇岩群など、火山がつくり出した独特の光景が見られます。最後の島、ラ・パルマ島ではロケ・デ・ロス・ムチャチョスの天文観測所などを訪れます。ここは、日本を含む国際チームが、宇宙からのガンマ線を観測する最新鋭望遠鏡を設置したことでも話題になりました。テネリフェ島とラ・パルマ島では、宮殿を利用した宿泊施設、パラドールで昼食を召しあがっていただく予定です。カナリア諸島は、カナリア州唯一の日本人ガイド、板垣奈緒さんがアテンドしてくれますので、ご興味のある方は、島での暮らしなどについても質問してはいかがでしょうか。
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スペイン最高峰、標高約3,717メートルのテイデ山を擁するテネリフェ島。国立公園には荒涼とした光
景が広がる
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ラ・パルマ島では、巨大なカルデラを中心とする
カルデラ・デ・タブリエンテ国立公園を観光
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カナリア諸島の観光は、カナリア州唯一の日本人公認ガイド、板垣奈緒さんがご案内
カナリア諸島のあとはポルトガル領のマデイラ島に向かいます。「常春の島」の愛称のとおり、植物園に鮮やかな花が咲き、市場にカラフルな野菜が並ぶ明るい雰囲気の島です。旧市街の散策も心浮き立つものとなるでしょう。
下船後の観光も充実させました。下船地のリスボンからは、定番のポルトガルツアーではなかなか組み込まれないアレンテージョ地方を訪れます。ポルトガルの原風景が残るとされるこの地方の景観は独特のもの。スペインとの国境近く、小高い丘の上に広がるモンサラーシュ、貴重な歴史的建造物が建ち並ぶエヴォラなど、個性豊かな美しい街々をお楽しみください。この地方では、城館を改装した宿泊施設、ポザーダにお泊まりいただきます。
ほかにもユーラシア大陸最南西端のサン・ヴィセンテ岬、最西端のロカ岬を訪れるなど、ここでは紹介しきれないほど盛りだくさんの旅です。
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常春の島と呼ばれるマデイラ島。植物園をランなどの花々が鮮やかに彩る
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ポルトガルの原風景が広がるアレンテージョ地方