日本各地には、ローカルな観光列車が数多く運行されています。今回は、個人旅行ではなかなか乗る機会が少ない、そんな愛らしい観光列車に乗車して、爽快な大自然や懐かしい田園風景などに浸る旅をご紹介します。窓側の席の指定や車両貸切といった特別な魅力はツアーならでは。初夏から真夏にかけての北陸、八ヶ岳高原、三陸で、心温まる時間をお楽しみください。
最初にご案内するのは、富山県の歴史都市・高岡を起点に山側と海側の両方に路線が伸びる、JR城端(じょうはな)線と氷見(ひみ)線を走る観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール~べるもんた~」から、のどかな北陸の風景を楽しむ2コースです。このなんとも個性的な列車名は、「美しい山と海」のフランス語表現であり、「べるもんた」の愛称で親しまれています。
富山湾の雨晴海岸を走る「べるもんた」と、頂上に松の木が立つ女岩
今回は、土曜日に運行する城端線城端駅~新高岡駅に乗車するAコースと、 日曜日に運行する城端線新高岡駅~氷見線氷見駅に乗車するBコースを設定。富山県で最も古い路線とされる城端線では、「散居村(さんきょそん)」と呼ばれる砺波平野独特の雄大な田園風景が車窓いっぱいに広がります。もう一方の氷見線は、富山湾越しに望む3,000メートル級の立山連峰の雄姿が最大の見どころ。その壮大な眺めには、誰もが息を呑むことでしょう。
“散居村”と呼ばれる砺波平野独特の美しい田園地帯を走る、「べるもんた」
「べるもんた」の車内には、沿線の伝統工芸品である「井波彫刻」が八作品や、「庄川挽物木地(しょうがわひきものきじ)」の茶碗などを展示。額縁風にデザインされた窓枠や「高岡銅器」をイメージした吊り革の装飾物など、一歩足を踏み入れれば、まるでギャラリーを訪れたような雰囲気を味わえます。また、寿司職人が乗車しており、富山湾の新鮮な海の幸を堪能できるのも大きな魅力。今回の旅では、旬の新鮮なネタを職人が車内で握る、富山湾鮨五貫も楽しみの1つです。
富山県南砺市の伝統工芸品である井波彫刻が展示される、「べるもんた」の車内
寿司職人が列車内で握る、新鮮な旬のネタによる
富山湾鮨
2泊3日のツアーでは、観光列車以外にも多彩なおすすめポイントがあります。その1つが、伝統の加賀料理を代々育んできた、明治23年創業の老舗料亭「金城樓」でお召しあがりいただく会席料理の夕食。加賀百万石の格式を伝える日本建築や庭園に抱かれて、静謐で贅沢なひと時をごゆっくりどうぞ。さらに、飛騨高山の古い町並みからほど近い「本陣平野屋花兆庵」での宿泊も見逃せません。朝、ご出発前の散策がてらに、人気の朝市をのぞいてみてはいかがでしょう。
加賀百万石の格式を伝える老舗料亭「金城樓」と、会席料理の夕食(一例)
次にご紹介するのは、「八ヶ岳高原線」の愛称でも親しまれる、JR小海線を走る観光列車「HIGH RAIL 1375」に乗って、夏の清々しい高原を満喫する旅です。山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅を結ぶ小海線は、途中の清里駅~野辺山駅間でJR線標高最高地点を通る、鉄道ファンにはお馴染みの路線。列車名に入っている「1375」は、その標高を表しており、「天空にいちばん近い列車」というキャッチフレーズもここから生まれました。当社の旅では初登場となるこの列車に、今回は清里駅から小諸駅までの約1時間50分を乗車。緑まばゆい高原のなかを走る車窓からは、雄大な南アルプスや八ヶ岳、浅間山、千曲川の清流などをご覧いただけます。また、全国のJR線の駅で最も高い所に位置する、標高約1,346メートルの野辺山駅では約20分間停車。駅正面とホームにあるJR最高駅の木製碑をバックに、写真撮影を楽しんではいかがでしょう。
豊かな森と田畑が広がるノスタルジックな風景に映える、「HIGH RAIL 1375」 提供:JR東日本
JR小海線の高原地帯を走る、「HIGH RAIL 1375」 提供:JR東日本
車窓を流れる夏のまばゆい緑の景観を、二人横並びで楽しめるペアシート 提供:JR東日本
金属風の質感を持つ車両外観は、高原の星空と八ヶ岳の山々をモチーフにデザイン。大自然のなかを走るワクワクがつのります。また、インテリアは、旅情をかきたてる意匠を随所に配置。四季の星々が描かれた座席、リベット調の窓枠、アート調に装飾した黒板風の壁面などに気分が高鳴ります。さらに、2号車には、天文関連の書籍を集めた、円形状のギャラリーが設けられており、半球形ドームに投影される星空映像も楽しめます。
お泊まりいただくのは、八ヶ岳高原のなかにある人気の高原リゾートホテル「八ヶ岳高原ロッジ」。天然木の柱や梁が印象的なロビーや、窓からの緑が美しい広々とした客室は、品格あふれる佇まい。本格的なフランス料理の夕食とともに、優雅で落ち着いた夏の1日をご満喫ください。
優美なコナシやシラカンバに抱かれて静かに佇む、「八ヶ岳高原ロッジ」
メインダイニング「ル・プラトー」でお召しあがりいただく本格的フランス料理の夕食(一例)
おすすめローカル観光列車の旅の3つ目は、岩手県を走る三陸鉄道リアス線に乗って、ダイナミックな海岸線の景観美を楽しむコースです。全国初の第3セクター鉄道として、三陸鉄道が開業したのは1984年のこと。当時は、盛(さかり)駅~釜石駅間の「南リアス線」と、宮古駅~久慈駅間の「北リアス線」の2路線で運行。東日本大震災による全線不通からの復興を経て、2019年、2路線の間にあったJR山田線が経営移管され、盛駅~久慈駅間が「三陸鉄道リアス線」として1つにつながりました。
今回の旅では、1車両を貸切って、新田老(しんたろう)駅~久慈駅間の約1時間20分を乗車します。その車窓からの一番の眺望ポイントといわれるのが、白井海岸駅~堀内(ほりない)駅間にある高さ約30メートルの大沢橋梁と、堀内駅~野田玉川駅間にある高さ約33メートルの安家川(あっかがわ)橋梁。窓いっぱいに広がる三陸復興国立公園の壮大な海の景観をご満喫ください。
「三陸鉄道リアス線」の一番の眺望ポイントとして知られる大沢橋梁は、長さ約176メートル、高さ約30メートル
2泊3日の旅でもう1つご注目いただきたいのが、水揚げまで4年をかけて育てられるブランドうに。今回のツアーでは、上質な昆布やわかめなどが繁茂する、北三陸の海底でうにを養殖する「洋野うに牧場」へご案内。約15キロにわたる巨大な牧場の見学と、うに剥き体験をお楽しみください。また、連泊する「渚亭たろう庵」は、断崖絶壁の海岸線の景観をすべての客室から一望できる宿。その夕食で、「洋野うに牧場の4年うに」を使った、うに会席をご堪能いただく予定です。
「洋野うに牧場」で4年をかけて大切に育てられる、うにの水揚げ作業
断崖絶壁から雄大な太平洋を一望する、
「渚亭たろう庵」に連泊
三陸の新鮮な海の幸をふんだんに使った、「渚亭たろう庵」の料理(一例)