[ クローズアップ ]

時代は
冒険(エクスペディション)
クルーズ

企画=阿部遥奈 文=佐藤淳子
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優雅な船で北極へ―この夢の旅を叶えてくれるのが、ラグジュアリー砕氷船、ル コマンダン シャルコーです。フランスの著名な探検家、ジャン・バティスト・シャルコーの名を冠した同船は、クルーズ業界で先陣を切って優雅な冒険クルーズを開発してきたポナン社の最新客船。その魅力を、同社の池田昂陽さんに語っていただきました。

  • イメージ イメージ 海を覆う氷を砕きながら進むル コマンダン シャルコー ©PONANT
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船でしか行けない場所へ 船でしか味わえない感動を

― ポナン社は、フランスで唯一クルーズ船をつくっている会社ですね。その歴史を教えていただけますか?

池田 はい、創業が1988年で、今年37年を迎えます。フランス人の船乗りが3本マストの小さな帆船からスタートした同社は、船ならではの楽しみを提供することを創業以来のコンセプトとしてきました。2015年、ラグジュアリー事業を展開するアルテミス社の傘下に入り、よりラグジュアリー路線に舵を切って今に至ります。

私たちが「ラグジュアリー」であることとともに大切にしているのは「小型」であること。それは、少人数のお客さまに丁寧なサービスを提供しながら、船でしか訪れることのできない場所にお連れするためです。現在13隻の外洋クルーズ客船を所有していますが、ほとんどが1万トンクラスの小さい船。だからこそ、南極や北極などの極地を航行できるだけでなく、地中海やカリブ海といったお馴染みの海域でも、通常のクルーズでは寄港しない港に着岸できるのです。

  • イメージ イメージ 極地研究で知られるフランスの探検家、ジャン・バティスト・シャルコーの名を冠したル コマンダン シャルコー ©PONANT

― それが冒険(エクスペディション)クルーズやラグジュアリー砕氷船の開発につながるわけですね。

池田 そうですね。その端緒は、2010年を皮切りに就航した4隻の耐氷船「シスターシップシリーズ」です。それまでも極地を目指すクルーズはありましたが、船内設備などの面で相応の体力や忍耐を必要とするものでした。私たちの船が、特別な装備も体力も必要としない、贅沢な冒険クルーズの先駆けとなったのは確かだと思います。

― その集大成が2021年就航のル コマンダン シャルコーですね。

池田 世界で唯一、ラグジュアリー客船でありながら氷を割って進める船です。砕氷船だからこそ到達できる場所にお連れし、そこで唯一無二のすばらしい体験を楽しんでいただけます。

― 快適な砕氷船を開発するうえで苦労された点は?

池田 厚い氷を割って進めば音もしますし、特に南極には揺れる海域もあります。そうした過酷な環境でも静かに快適にお過ごしいただくため、多大な投資をして最新の技術を投入しました。人里離れた地に訪れる客船として、燃料はLNGと電気のハイブリッド、さらに100%の廃棄物処理システムを備えるなど、地球環境への配慮も重要視しています。

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食事はアラン・デュカスが監修 船外に広がるのは究極の非日常

― 船内にはどのような特徴が?

池田 当社の1万トンクラス船のほとんどが乗客定員最大260名程度であるのに対し、ル コマンダン シャルコーは、その3倍の3万トンの大きさにもかかわらず、乗客定員は245名。つまり、より広いスペースで快適にお過ごしいただけるということです。インテリアはすべてフランス人デザイナーが手がけ、洗練された色やデザインが施されています。

  • イメージ イメージ オープンエアのラウンジバーの中央には溶岩石のヒーター ©PONANT
  • イメージ 船首に設けられた「パノラミック・バー&ラウンジ」。360度の大海原を眺望 ©PONANT
  • イメージ サウナで温まった体は、併設のスノールームに用意された本物の雪でクールダウン ©PONANT
  • イメージ イメージ 全室がプライベートバルコニー付き。写真は、約20㎡のプレスティージ・ステートルーム ©PONANT

― 料理についてはいかがでしょう。

池田 ポナン社の船の食事は、フランス料理界の巨匠、アラン・デュカスのチームが監修していますが、ル コマンダン シャルコーに関しては、デュカス自身がメニューを考案し、シェフやパン職人、パティシエを世界各地にある自身のレストランから派遣しています。彼がそこまで力を入れるのは、食材が入手しにくい環境でいかに質の高い食事を提供するかを彼自身の挑戦と考えているため。そうした意味でも、同船は当社の船のなかでもワンランク上といえるでしょう。

  • イメージ イメージ 「食通の船」としても知られるポナン社の客船。メインダイニング「NUNA(ヌナ)」では、アラン・デュカスがメニューを手がけるディナーを堪能 ©PONANT

― 現在のクルーズの潮流のなかで同船の存在をどう捉えていますか?

池田 クルーズ人口は今、コロナ禍前を上回っていて、なかでも数を伸ばしているのが冒険クルーズです。世界の有名観光地に観光客が集中するなか、辺境の地を旅先に選ぶ人が増えているのかもしれません。ル コマンダン シャルコーは、そうしたニーズに対する究極の選択肢だと自負しています。

  • イメージ イメージ カヌーで流氷に近づいたり、ゾディアックボートでクジラを観察したりと、北極圏だからこそできる楽しみはいろいろ。アクティビティはすべてエクスペディションリーダーのサポートがつくので安全に楽しめる。防寒着(パルカ)は船から支給 ©PONANT

― 来年は、2コースの北極圏クルーズをお客さまにご案内する予定です。

池田 ありがとうございます。北極圏の氷海を眺めるという究極の非日常をぜひ楽しんでいただきたいですね。デッキの温水プールや大きな窓付きのサウナ、レストランのテラスなど、船にはゆったり外を眺望できる場所が多くあります。調査で乗船している極地研究者が船内講座の語り手を務めるのも魅力の1つ。同船に知的好奇心旺盛な乗客の皆さまが多い印象なのは、こうした楽しみが豊富だからかもしれません。贅沢な環境で極地を目指す。この特別なクルーズをぜひご体験いただきたく思います。

― 貴重なお話をありがとうございました。

  • イメージ イメージ 船尾に設けられた「ブルーラグーン」。常時37度に保たれた温水プールから最果ての海を望む ©PONANT