大きな空の下、たわわに実った果物を夢中で摘んで頬張った体験は、今も色あせない思い出ではないでしょうか。そんな子ども時代のワクワク感が蘇る果物狩りのバス旅を、6コースご用意しました。
最初にご案内するのは、山梨県の笛吹市で新品種の「ブラックシャインマスカット(富士の輝)」の味わいを体験していただく旅です。紫黒色の輝きも眩いこのぶどうを開発したのは、世界最大級の大粒ぶどう「雄宝」をはじめ、30品種を超えるぶどうを生み出したという「志村葡萄研究所」です。その豊富な開発技能を結集して誕生させた「富士の輝」の特長は、蜜のように濃厚な甘み。糖度は24度以上で、30度を記録した個体もあったそうです。巨峰が16~20度、デラウェアが18~20度の糖度ですから、「富士の輝」の圧倒的な甘みは想像に難くないでしょう。またサイズは25~30グラムと大粒で種なし、皮ごと食べられることも魅力です。
当日は、高級ぶどう5種を味比べするとともに、滅多に市場に出回らない「富士の輝」ひと房をお持ち帰りいただきます。お土産として家族やお知り合いにお裾分けすれば、きっと喜ばれることでしょう。
古代エジプトの壁画にも描かれているように、ぶどうは紀元前4000年頃には存在していたとされる果物。日本へは中国から伝わったそうです。悠久の時を経て改良を加えられ、今では世界に1万種以上あるといわれるぶどうの進化には、かのダーウィンも目を丸くするのではないでしょうか。
「スモモも桃も桃のうち」という早口言葉がありますが、同じバラ科でも桃がモモ属であるのに対し、スモモはサクラ属。さらにややこしいことに、英語では日本スモモはプラム、西洋スモモはプルーンと呼び名が変わります。
2つ目にご案内するのは、数あるプラムのなかでも大きさとおいしさから“プラムの王様”と称される「貴陽」をもぎ取り体験いただく旅です。今回訪れる農園のプラムは低木樹なので、お体の無理なく楽しんでいただけます。
バスで中央自動車道を走り、長野県・松川ICを降りると3分ほどで「大石農園」へ。中央アルプスと南アルプスに抱かれた伊那谷の地で、清々しい空気を感じながらプラム狩りを満喫しましょう。農園へ歩んでいくと、目に飛び込んで来るのは「貴陽」の見事な成りっぷり、そして桃と見まがうばかりの粒の大きさです。それも、そのはず。この大玉品種は、かつて園主の大石さんが特に大きく実った個体をギネス基準にそって計量したところ、当時の最高記録を大きく上回る417.87グラムもあったそうです。
大きさが注目されがちな「貴陽」ですが、その味わいは果汁たっぷり、酸味は控えめで甘味際立つ上品さ。収穫時期が8月中旬~9月上旬ときわめて短いため、8月19日出発のこの旅を見逃す手はありません。当日は、「貴陽」のもぎ取り(2個)と試食を体験いただきます。
暑さ厳しい夏にこそ、甘酸っぱくも清々しいいちごの味わいが恋しくなってきます。3つ目にご案内するのは、そんな想いを満たす旅です。標高約1,400メートルに位置する奥日光・戦場ヶ原で、栃木県の奨励品種「なつおとめ」をはじめとした“天空の高原いちご”狩りをお楽しみいただきます。
夏でもおいしいいちごを味わえるように心血を注ぐのは、昭和20年代からこの地で農業を営み、平成28年に高冷地に適した「なつおとめ」の栽培を開始した「Mt.Berry奥日光」です。夏いちごは、気温が30度以上になると花や実が成らなくなったり、「成り疲れ」といって、株が疲れて実が成らなくなったりすることも。おいしく、たくさん実るポイントは夜間の涼しさですが、夏から秋の奥日光の夜間気温は10度~15度と最適なのです。
雪解け水を含む澄んだ水と冷涼な地域特性を活かしながら、「Mt.Berry奥日光」では、苗を地面に直植えする土耕栽培と、栽培槽を高い位置に置いた高設栽培の栽培方式を適宜、採用。その日のいちごの状態を見極めながら、水や肥料をきめ細かに管理しています。
そんな苦労の結実ともいえる「なつおとめ」ですから、味わいは疑うべくもありません。糖度12度を超える甘味とさっぱりとした酸味の調和が絶妙。鮮やかな赤い果肉は、ケーキやパフェなどに使うと見栄えも抜群です。
当日は「なつおとめ」をはじめ、夏いちごを味比べ。奥日光ならではのリゾート気分に浸りながら、“旬”を迎えた夏いちごのおいしさを、存分に味わってください。
例年、好評をいただいている果物狩りのコースにも心躍ります。
まずご案内するのは、長野県北部の千曲市に佇む「中島農園」です。寒暖差がある自然豊かなこの地で、約30年にわたり県産の果物をつくり出している農園で、長野県オリジナル品種のぶどうである「ナガノパープル」狩りを楽しんでいただきます。
「巨峰」と「リザマート」の交配によって誕生したこの品種は、長野県果樹試験場で育成され、2004年に品種登録された大粒の黒ぶどうです。粒の大きさは、巨峰に匹敵。糖度18~21度と甘みが強く、酸味は穏やか。果汁もたっぷりで、香り豊かな風味を楽しめます。当初は県内のみ栽培が許されていましたが、2018年に解禁されたので、全国各地でおいしさを楽しめるようになるでしょう。
格別の味わいを堪能するほどに、山梨県と並ぶぶどうの大産地・長野県の実力のほどを実感できます。
粒が大きく、糖度20度ほどの濃厚な甘さ。近年人気のぶどう「シャインマスカット」ですが、つくり手によってこうも味わいが変わるのかと唸ることでしょう。心躍る舞台は山梨県甲斐市、晴れていれば富士山も望むことができる「ヤモト農園」です。
農園主の箭本孝徳(やもと たかのり)さんは、農業大学を卒業後に民間会社を経て、家業を継ぐべく就農。以来、おいしいくだものを実らせたい一心で、サトウキビ、青魚の抽出液などを配合した独自の自然肥料を使用するとともに、効率よく太陽の光を受けるように枝の育て方も工夫。そんな努力の甲斐あって、箭本さんが育てたサクランボは銀座の有名果物店のバイヤーに認められ、店頭販売されたことも。
また、2012年には第42回「日本農業賞 山梨県審査会最優秀賞」、2020年には「山日YBS農業賞 最優秀賞」も受賞。そんな果物づくりの名人が丹精込めて育てた「シャインマスカット」の味わいを、この機会にぜひご堪能ください。
夏といえば、桃。となればバスに乗って、果物王国・福島へと繰り出しましょう。訪問先は、世界一甘い桃づくりを目指しているという「古山果樹園」です。明治から5代続く農家で、大正4年から果物づくりをはじめたそのこだわりようは、相当なもの。果実の1玉ひと玉にやさしく手でふれ、愛情を込めて育てるために、栽培、収穫から出荷までのすべてを、農園主の古山浩司さんを中心に家族だけで賄っています。
「ステビア農法」を取り入れていることも、こだわりの1つ。この農法は、鹿児島県でステビアという多年草を栽培していた農家が、その茎を堆肥としてみかん栽培に利用したところ、みかんの味が変わったことから利用されるようになり、その後、さまざまなくだもの栽培に用いられています。
当日は、家族経営を貫きながらひたすらにおいしさを追求する「古山果樹園」の桃をもぎ取り体験。その柔らかにして、みずみずしい甘味にうっとりしてしまいます。
たかが果物、されど果物。栽培へのこだわりや苦闘を古山さんからお聞きするほどに、旅の味わいも一層奥深いものになることでしょう。