2026年5月の引退を控え、今日も日本各地をめぐる「にっぽん丸」。当社主催のチャータークルーズも、いよいよ3月に最終回を迎えます。想いせつなくも、それでいて待ち遠しいようなラストクルーズ……そんな皆さまのために、最後を飾るにふさわしい多彩なプログラムをご用意しています。そこで先号のベイビーブーさんのインタビューを通じたエンタメショーに続き、今号は高知・下関での寄港地観光のご紹介です。最高の思い出を、どうぞ胸一杯お持ち帰りください。
2026年3月10日。当社最後のチャータークルーズを名残惜しむ多くの関係者に見送られながら、「にっぽん丸」は横浜港を出航。翌日の昼過ぎ、最初の寄港地・高知に寄港します。土佐24万石の城下町の魅力にふれる、多彩なオプショナル観光へと繰り出しましょう。
ぜひとものおすすめは、人気ドラマのモデルとなった人物ゆかりのスポットです。その1つ目は、「香美市立 やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアム」です。貴重な絵本原画などを通じて、「アンパンマン」の生みの親・やなせたかしの世界観を体感できます。館内に隠れているアンパンマンと仲間たちを探しながら、童心にかえったようなワクワク体験をお楽しみください。見学前には、船内イベントで観光協会の方による講演会を開催。やなせたかし寄贈の絵馬がある「大川上美良布(おおかわかみびらふ)神社」の参拝も、心和みます。
「アンパンマン」の生みの親・やなせたかしの世界観を体感できる「香美市立やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアム」©やなせたかし ©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
もう1つは、植物学者・牧野富太郎ゆかりの「高知県立牧野植物園」です。五台山に佇むこの植物園には、富太郎ゆかりの植物を中心に3,000種類以上が植栽されています。また、「牧野富太郎記念館 展示館」では、世界的にも評価の高い富太郎が描いた植物図を多数展示。その緻密な筆跡に、植物に対する彼の深い愛情を垣間見る想いがします。
植物学者・牧野富太郎ゆかりの「高知県立牧野植物園」。展示館では、富太郎が描いた植物図の緻密さに目を見張る 高知県立牧野植物園 提供
高知県立牧野植物園 所蔵
高知といえば幕末のヒーロー、坂本龍馬。ゆかりの名所旧跡が多数あるなかで、日本一大きな龍馬像が迎える桂浜は、おしゃれなカフェなども新設され、再訪される方々もきっと新たな感動に満たされます。歴史好きな皆さまには、日本で唯一、本丸御殿が完全に残っている「高知城」は必見です。「南海道随一の名城」と讃えられる、その優美な姿を思い出に留めてはいかがでしょうか。
楽しみの1つが、レトロな装いも愛らしい国内最古の路面電車「とさでん」を貸し切っての乗車体験。城下町の景色を、車窓からのんびりと眺めるひと時に癒されます。また、クラシックな外国製電車の数々が出番を待つ、車庫風景も見ものです。
初代土佐藩主・山内一豊が創建。本丸御殿が完全に残っている「高知城」
外国製電車の数々が出番を待つ「とさでん」の車庫見学も
朝陽に包まれながら進み来た「にっぽん丸」は、下関港(長州出島港)に着岸。下関での寄港地観光のはじまりです。おすすめは、山口県が誇る二大絶景をめぐるオプショナル観光です。「元乃隅神社」の日本海に向かって連なる123基もの朱色の鳥居と青い海が織り成すコントラストは、思わず息を呑む艶やかさです。
神々しいまでの伝統美を堪能したのちは、角島(つのしま)大橋を渡り、白い砂浜とコバルトブルーの海に囲まれた角島へ。ここが日本海に面した地かと疑ってしまうほど、リゾート感たっぷりの情景をご堪能ください。角島灯台公園には、造形も麗しい高さ約30メートルの角島灯台が。105段の螺旋階段を昇った先には、美しい海と角島を一望する大パノラマが待っています。
角島大橋を渡り、白い砂浜とコバルトブルーの海に囲まれた角島へ
「秋芳洞」では、悠久の時を経て生み出された自然造形を満喫
朱色の鳥居と青い海が織り成すコントラストに息を呑む「元乃隅神社」
山口県屈指の名勝地、大鍾乳洞「秋芳洞(あきよしどう)」の観光も可能です。棚田を思わせるような「百枚皿」、高さ約15メートルの鍾乳石「黄金柱」など、悠久の時を経て生み出された自然造形をご満喫ください。
海峡都市・下関の魅力にふれる、多彩な寄港地観光もお楽しみください。「海峡ゆめタワー」では、地上約143メートルの展望室から、関門海峡や瀬戸内海、日本海と360度のパノラマを。下関の町並みや巌流島も眺望できます。「関門橋」をドライブして向かう「関門海峡ミュージアム」では、船舶や関門海峡の自然、歴史などを体験型展示により知ることができます。
また、自由散策される方には、関門海峡に架けられた全長約1,068メートルの吊り橋「関門橋」を徒歩で渡り、福岡の港町・門司を散策するのもおすすめ。人道トンネルは世界的にも珍しく、なかなか体験できないひと時です。壇ノ浦を望む「赤間神社」での参拝や、歴史ある城下町・長府の散策に加えて、老舗の「ふく旅庵 下商会館」で堪能する本場のふぐ料理も楽しみの1つ。ふぐ刺しの「鶴盛り」は、味わいもさることながら、絶妙な包丁さばきと彩りに感服するばかりです。
壇ノ浦の合戦に敗れ、関門海峡に入水された安徳天皇を祀る「赤間神社」
老舗の「ふく旅庵 下商会館」では、包丁さばきと彩り鮮やかなふぐ刺しの「鶴盛り」を堪能
歴史ある城下町・長府をのんびりと散策
陽が傾き始めた午後4時頃、「にっぽん丸」は下関の港を出航し、豊後水道を経て瀬戸内海へ。2008年にチャータークルーズを催行して以来、「にっぽん丸」は当社にとっても思い出いっぱいの客船。その感謝の想いを込めたイベントとして、花火を打ち上げます。夜空に咲いては消えゆく花火を船上から眺めるほどに、「にっぽん丸」への惜別の念が募ってきそうです。
夜の瀬戸内海航行も魅力的。客室の窓辺から沿岸を望むと、町々の灯りが煌めき、車のヘッドライトの軌跡が流星のように移りゆく光景に陶然とすることでしょう。ふと、デッキから春の夜空を見上げると、しし座やかに座などが輝き、下弦の月がぽっかりと。のどかな景色に癒される日中の瀬戸内海とは違って、しっとりとした情感に包まれる夜の風情をご満喫ください。
打ち上げられる花火を船上から眺めるほどに、惜別の想いが(イメージ)
翌早朝、明石海峡を渡るタイミングで目にするのは鮮やかな朝焼け。その息を呑むほどの壮大な情景は、「にっぽん丸」の雄々しい航海を、長年ともにしてきた太陽と大海原からの惜別のメッセージでしょうか。
ありがとう!「にっぽん丸」―心こもったおもてなしと、丹誠を込めた美食。そして、ときめきのエンターテインメントショーなどを通じて紡いだ数々の思い出は、いつまでも色あせることはないでしょう。