今年はいつもの紅葉観賞と趣を変えて、草花が織りなす秋景色を思い出に刻んでみませんか。
ご案内する旅では、ケイトウ、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)、コキアの花園を訪れる3つの日帰りコースと、道東エリアを訪ねてサンゴ草の群生と手つかずの自然にふれるコースをご用意しました。華やかながらも、しっとりとした秋の風情に包まれる旅をお楽しみください。
1つ目のコースは、初秋のそよ風が吹きわたる那須高原が舞台です。このリゾート地に佇む「那須フラワーワールド」では、なだらかな丘いっぱいにケイトウが咲き誇ります。赤や朱色、黄色、ピンクなどの花々が美しさを競う光景は、名の由来である“鶏頭(鶏のトサカ)”というより、色とりどりに燃え盛る炎の競演のようです。おすすめは、入り口のベンチにのんびりと腰かけながらの眺望。約300万本ものケイトウ群が丘に沿って絨毯のようにうねる様と、背後にそびえる那須連山が織りなす景観は見ごたえたっぷり。「那須花(ナスカ)の地上絵」と讃えられるのも頷けます。
2つ目は、埼玉県の高麗川(こまがわ)沿いにある巾着田(きんちゃくだ)で深紅に染まる曼殊沙華を慈しむコースです。約500万本にもおよぶ曼殊沙華がこの地に群生したはじまりは、河川の蛇行や氾濫により球根が土砂とともに上流から流れ着いたことによるのだとか。秋のお彼岸を待っていたかのように突然開花することから、彼岸花とも呼ばれる曼殊沙華は、サンスクリット語で〝天界に咲く花〟を意味します。森閑とした雰囲気のなか、艶やかに咲く光景は、幻想の世界に引き込まれていくようです。
そして3つ目のコースでは、「国営ひたち海浜公園」で秋の到来とともに色を深めていくコキアを堪能しましょう。大きな空と潮風の開放感に浸りながら、シーサイドトレインに乗って「みはらしの丘」へ。はっと息を呑むのは、あたり一面を紅に染める約3万2,000本のコキアの群生です。この一年草を近くで見ると、丸々とした生き物のよう。かわいらしい姿に、思わず気持ちも和みます。約280万本のコスモスと奏でるハーモニーも、お見逃しなくどうぞ。
一度はその目に焼き付けたい秋景色が、オホーツク海とつながる北海道・能取湖(のとろこ)の紅葉です。紅葉といっても正体は、この汽水湖に群生するサンゴ草の彩り。色と姿が海に棲むサンゴに似ていることから名付けられた一年草が、短い秋を名残惜しむように一斉に紅色に染まります。貴重な光景を日本で目にすることができるのは、能取湖やサロマ湖など一部の地域だけ。整備された木道をそぞろ歩きながら、奇跡のような秋景色を間近でお楽しみください。
日本最後の秘境・知床や、日本ではじめてラムサール条約湿地に登録された釧路湿原と、道東ならではの大自然も堪能していただきます。釧路湿原では、温根内ビジターセンターを起点に木道をゆったり散策。ヨシ、スゲやミズゴケなどの湿原やハンノキ林など、秋の訪れとともに情感を深める自然の表情に癒されることでしょう。アカゲラやタンチョウが、ひょっこりと姿を現してくれるかもしれません。