九龍半島の突端に建ち、今年で開業97年を迎える「ザ・ペニンシュラ香港」。東洋と西洋が融合し“東洋の貴婦人”とうたわれる、伝統と格式を誇るアジアを代表する最高級ホテルです。激動の時代に翻弄されてきた香港のなかで、どのような歴史を刻んできたのでしょうか。
1842年イギリスによる香港統治がはじまり、人口が1万人にも満たない小さな漁村が世界有数の国際都市へ変貌を遂げました。そして1997年イギリスから中国へ返還。そんな激動の時代を生き抜いてきた香港を間近で見届けてきたのが、「ザ・ペニンシュラ香港」です。このホテルは、イラクのバグダッドに生まれたユダヤ人、カドゥーリー兄弟が創業した「香港上海ホテルズ社」によって1928年に開業しました。
兄のエリスと弟のエリーは1880年に上海に移住し、商社に勤め、やがて独立します。類まれな商才を持つ弟エリーは、香港に進出し証券会社を設立して銀行や電力会社の株式を手に入れ、わずか23歳で「香港ホテル」のオーナーになりました。その頃、九龍半島先端尖沙咀にスターフェリーが開通。中国大陸とを結ぶ鉄道駅も完成しました。エリーはこの地にホテル建設に着手。「スエズ運河より東で最高のホテルを建てる」という理念を掲げて誕生したのが、「ザ・ペニンシュラ香港」です。
洗練されたサービスとエレガントな雰囲気から“東洋の貴婦人”とうたわれ、1930年以降はハリウッドのスターや、王族も訪れる香港社交界の中心地となりました。第2次世界大戦の日本の占領時代には「東亜ホテル」と改称され、日本軍の総督府が置かれたこともありました。
現在はエリーの孫にあたるマイケル・カドゥーリーさんが事業を引き継ぎ、一族の経営が続いています。
壮麗なコロニアル様式で建てられた白亜の本館の後ろに、1994年に新設された30階建てのタワーウイングがそびえる「ザ・ペニンシュラ香港」。車寄せには送迎用のロールスロイス・ファントムがずらりと並び、正面玄関の両脇には2頭の獅子像が見守っています。エントランスでは白い制服に白い帽子のページボーイがお出迎え。一歩なかに踏み入れると、そこに広がるのは周辺の雑踏とはまるで別世界の緩やかな時間が流れる優雅な空間。白い柱が立ち並ぶコロニアル調のラウンジ「ザ・ロビー」で、生バンドの演奏とともに楽しむ英国式アフタヌーンティーはあまりにも有名です。
ペニンシュラホテルは世界でわずか12軒。その都市の最高の立地に、土地の文化や伝統を取り入れたデザインで建てられます。すべてのホテルを自社で所有し、運営・管理しているので、一貫性のある高いサービスが提供できるのです。「ザ・ペニンシュラ香港」では、2013年には全客室を改装し、古き良き時代のエレガントな雰囲気を残しつつも最先端テクノロジーを導入しました。顧客の国籍に合わせた言語で表示されるタブレット端末で、照明、カーテン、空調等をコントロールできるようになりました。もちろん日本語対応もあります。バスルームにはシンクが2台、独立したシャワーブース、大理石のバスタブにはビルトイン式のテレビが備え付けられています。
外観や内装が魅力的なのはもちろん、顧客をひきつけるのは、なんといっても行き届いたスタッフのおもてなしです。ペニンシュラでは「7つの柱」から成るサービス哲学があり、すべてのスタッフのトレーニングの基盤となっています。それは「お客さまに愛を持って接すること」「お客さまが来た時よりも帰る時に幸せになってもらうこと」「まごころを込めること」「常にサービスの質を高めること」「ホテルの歴史と伝統に誇りを持つこと」「お客さまにそっと寄り添うこと」「スタッフ自身が楽しんで働くこと」です。スタッフもペニンシュラの一員であることに誇りを持っていて、勤続年数が長く定着率が高いため親子代々務めているホテルマンもいるほどです。日本のお客さまには日本語対応スタッフを配置し、日本料理レストラン「今佐」があり、朝食ビュッフェには和食もご用意しています。
そして、街全体がおとぎ話の世界のようにイルミネーションで煌めくクリスマスシーズンには、毎年有名ブランドとのコラボレーションでホテル外観と館内が美しくデコレーションされます。ぜひこの機会に「ザ・ペニンシュラ香港」に実際に宿泊して本当のすばらしさをご体感ください。